田の神さんのお話

角田産直童話村

 ここは、角田産直童話村です。
きょうも、角田の畑や田んぼから、おはなしが採れました。

第1話

第1話は、角田の方言「やみすけ」と「まんぱち」が、こんなお話になりました。

「やみすけ、まんぱち、うまい飯!」

昔、あるところに、やみ闇介とまんぱちがおったそうな。闇介とは、根っからの怠け者、まんぱちとは、一万に八つもまともに仕事のできんやつのことをそう呼んだものだ。本当は二人には親からもらった立派な名前があった。が、名前で呼んでくれるもんは誰もいなかった。村の衆も、二人のやみすけ、まんぱちぶりには、ほとほと手を焼いていたんでな。
それにしても、このまま放ってはおかれまいというので、名主様が知恵を絞る事になった。三日三晩考えたあげく、名主様の頭に、ついにぴかりと名案が浮かんだ。そして村はずれのあばら家に、二人を呼びつけるとこう言い渡した。
「ええか、闇介にまんぱちよ。おまえたちに田んぼを預けるよって、秋までに見事米俵十表とってみよ。さすれば、嫁ごをせわしてやろう。それにはじゃな。まず、始めのひと月は闇介が野良仕事をし、まんぱちが飯炊きをしろ。次のひと月は闇介が飯炊きにまんぱちが野良仕事じゃ。後は二人で、何でもいっしょにやるがええ」
 はてさて、この二人のろくでなしがいっしょにくらしたら、どうなることやら。
案の定、闇介は田んぼに出ても、大して働くでもない。畦でごろごろ昼寝ばかりしておった。まんぱちとくれば、飯を炊かせりゃ粥になったり硬すぎたり。魚焼かせりゃ黒焦げに生焼け。まんぱちも闇介も、自分を棚に上げては喧嘩ばかりしておった。
「何じゃ、あの田んぼは!苗の丈より草の丈のほうが高くなったわい」
「何じゃ、このまずい飯は!ちっとも力がわいてこんわ」
「何じゃと、この闇介め!」
「何じゃとは何じゃ!このまんぱちめ!」
 村はずれのあばら家は、なんとも暗い荒れたあばら家になってしもうた。村の衆も心配になって、名主様の所にやってきた。
「名主様。あいつらと来たら、朝から晩まで喧嘩ばかり。田んぼは荒れ放題で、村中の田んぼまで荒れてきそうでさあ」
 名主様はぐっと腕組みすると言った。
「まあ待て。苗の育つのと同じじゃ。時期がくれば茎も伸びる。花も咲く」
村の衆も、名主様のおっしゃる事なら間違いのあるはずはねえと、家にひきあげた。
 さて、ひと月がたち、今度はまんぱちが野良仕事、闇介が飯炊きをする番になった。まんぱちは必死で、荒れた田んぼの草取りをした。だがそこは、まんぱちの仕事。草の抜き方も、相変わらずのまんぱちだった。闇介といえば、家でごろ寝ときた。ところがこの男闇介のくせにえらい食いしん坊。まんぱちをぎゃふんといわせてやろうと、飯の支度に取り掛かった。まんぱちが家に帰ると、なにやらいい匂いがする。鼻がひくひくいいだした。しかめっ面も、ほんわりとろけていくようだった。
そこへ闇介が、飯をドン!とおいた。
「ほれ、まんぱち、食え!」
まんぱちは、一口食べるなり、すっとんきょうな声を出した。
「うまい!うまい!」
そうして、一口食べるごとに、この「うまい!うまい!」を連発した。
 とうとう闇介は、まんぱちの姿に笑いをこらえきれなくなった。
「わはは、まんぱち、そんなにうまいか?」
「ああ、うまい!うまい!わははは」
うまい飯の力はたいしたもんだな。喧嘩ばかりのあばら家に、初めて笑い声が響いた。それからというもの、まんぱちは、なにやら腹にグッグッと力が入って、野良仕事も十に八つはきちんとできるようになった。闇介といえば、まんぱちがあんまり誉めるものだから家の仕事にも、つい力が入った。
 驚いたのは村の衆だ。村はずれのあばら家は、いまやこざっぱりした家になり、荒れた田んぼも、村一番の美しい田んぼになった。
「まんぱちよ、おめえなんで、仕事できるようになっただ?」
「そりゃ、うまい飯のせいだべ」
そこで村の衆は、やみ闇介にうまい飯の作り方を教えてもらいに行った。
「やみ闇介よ、うまい飯どうやってつくる?」
「そりゃ、うまい!うまい!って誉められれば、誰でも作れるべ」
村の衆は早速家に帰ると、「うまい!うまい!」と、うんとほめて、うまい飯つくってもらったんだと。さて、秋になり、名主様がやってきた。土間には見事、米俵十表置いてあった。名主様は満足げに笑った。
「見事じゃ!約束どうり嫁ごを世話してやろう」
二人は、手を取り合って喜んだ。
「ところで、まんぱち嫁ごと、闇介嫁ごのどっちがええ?」
二人は、ギョッとして顔を見合わせた。
「ヒエエツ!それだけはごかんべん!」